201310-questionnaire
若手研究者ネットワーク代表者の皆様・およびアンケートにご協力をいただいた皆様へ
【緊急アンケート】改正労働契約法に関する若手研究者アンケート 集計結果報告
2013 年10月3日
日本学術会議 若手アカデミー委員会 若手研究者ネットワーク検討分科会委員長 蒲池みゆき
http://www.youngacademy-japan.org/network
拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
日本学術会議若手アカデミー委員会若手研究者ネットワーク分科会は、改正労働契約法に関する緊急アンケートを実施いたしました。9月19日にアナウンスを開始し、10月2日正午までの短期間におよそ1800件(2013年10月2日現在、後述の概要報告数値はこの時点のもの)のご回答をいただきました。周知、ご回答いただいた皆様方のご協力、委員一同深く感謝いたしております。このアンケート結果をご活用頂くべく、可及的速やかに、各省庁等に周知させていただきます。
現時点でのアンケートの要約、および全結果は下記のWebサイトに公開されています。全結果は、Google社の結果集計機能を利用したもので(PDFはこちらから)選択項目の回答割合を「円グラフ」、自由記述項目はそのままの形で表記されております。見づらい状態かと思いますが、回答公開の迅速性重視のためご了承いただければ幸いです。
主要な意見は下記のとおりです。
1)改正労働法により影響を受ける
大きな影響があると回答した割合が約50%、多少の影響があると回答した方の割合が約29%にのぼり、合わせて80%近くの方が影響を受けると回答しています。
改正は5年の雇い止めにつながると考えた回答者が多く、その点からのマイナス面を指摘した意見が多数ありました。特に非常勤講師が雇い止めになり職を失う問題が論点になっています。また、優秀な技官や事務員の雇い止めの影響も指摘されています。
意見としては少数ですが、公正に運用されれば無期雇用になるのはよい、流動化が促進されるという意見もありました。
2)改正労働法を、研究者のみ適用除外するとよいのか否か
意見が割れました。研究者のみ適用除外するという意見が約21%にのぼる一方、雇用の安定化を目指す法律を研究者のみ適用除外しない(すべきではない)という意見も約19%に上りました。
3)若手問題について
若手ポストの増加、無期雇用者に対する採用・評価方法の変更/厳格化、キャリアパスの多様化など、多くのご意見をいただきました。
さらなる要約(参考)を最後に添付します。
いただいたご意見のうち、日本学術会議および若手アカデミー委員会、分科会、さらに本アンケートの形式に対するご意見もありました。一方、我々分科会の活動に関するご理解やアンケート活動への謝意など、こちらがお願いしているアンケート回答であるにもかかわらず、我々への励ましとなるお言葉も多々いただきました。いずれも貴重なご意見として、社会にむけての学術会議の提言活動に生かすとともに、我々委員の今後の活動の一層の励みともさせていただきます。
今後とも、若手科学者ネットワークへのご協力のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
末筆ながら今後とも皆様のご研究のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。 敬具
注1)なお、アンケート結果につきまして(自身が所属される団体などへのプレゼンテーション等)何らかの目的のために二次利用をされる場合、必ず出典を明示いただくとともに、可能な限り事前に当分科会までお知らせください。また、アンケート結果の無断でのデータ内容改編はご遠慮願います。
注2)自由記述欄は、個人が特定される恐れがある部分、および誹謗中傷と捉えかねられない部分を除き、そのまま公開しています。
(参考)下記は、上記よりも少し詳しいアンケート結果の要約です。
1)労働契約法改正の影響について
(マイナス面)
改正は5年の雇い止めにつながると考えた回答者が多く、その点からのマイナス面を指摘した意見が多数。
・ 契約更新がされず、雇い止めにつながる可能性が高い(この意見多数)。雇い止めになるのではないかという不安、更新条件が厳しくなるのではないかという不安が現場に広がっている。
・ 5年雇い止めにより、技術や技能の継承に支障を来たし、教育研究活動の停滞を招き、人材育成のコストが上がる。研究員が短期で転出すると、高度人材を保つことが困難になり、大型プロジェクトの進捗に支障がでる(この意見多数)。
・ 優秀な人材が確保できなくなる。学生から敬遠され、将来の人材教育、育成に深刻な影響がある
・ 大学への不信感が高まる
・ 研究のモチベーションが下がる
・ キャリア像を描きにくくなる
・ 長期的視野にたった研究が行えなくなる(この意見多数)
・ 地方や小規模大学では非常勤講師の雇用が不可能となり、授業が開講できないなど深刻な影響が出る
・ 任期付ポスト採用に慎重になり、新規採用が控えられる。
・流動性の低下を招く恐れがある。
(プラス面)意見としてはかなり少数
・ 公正に運用されれば、優秀であれば無期雇用されるということはモチベーションを保つ上でよい影響がある
・ 非常勤講師を惰性で続けていた者にとっては決断のよい機会になる
・ 長期雇用をみすえた人事が増える
・ 雇用の流動化が高まるため、多くの研究者に機会が与えられることになり、非常によい影響がある。
2)適用除外について
研究者のみ労働者として特別である理由がないので、適用除外すべきでない、という意見がみられた。適用除外すべきであるという意見の理由は1)で挙げられたようなマイナス面に対する懸念から。
3)若手研究者のキャリア問題に対する提案
<ポストの増加>
・ 一人でも多くの無期雇用のポストをつくる(この意見多数)
・ 大学での職の種類を増やす
・ 任期付の職の全廃
<無期雇用者に対する採用・評価方法の変更/厳格化>
・ 大学教員も含め研究職はすべて任期付にし、一定期間ごとに雇用の継続を判断するようにする
・ 年功序列の撤廃
・ 無期雇用教員に対する評価の導入
・ 学位取得者やポスドクの就職実績を雇用者の評価に加える
・ 教授、准教授を減らして助教のポストを増やす
・ 研究職はすべて公募とする(研究所にはまだ公募でないところが残っている)
<キャリアパスの多様化>この意見多数
・ キャリア形成のための選択肢の多様化と、その情報提供。
・ 企業への就職を紹介する。
・ アカデミアへのポストに就くことを前提とした単線的な制度設計を改める。
・ 国家公務員1種の採用にあたって年齢制限を撤廃し博士号所持を義務付ける
・ ある程度のポスドク期間を経たものを全員国家公務員として採用する
・ 中等教育の理数科教員に自然科学の博士号を義務付ける
・ 若手研究者が全員次の職につけることはありえないので、そのリスクをあらかじめ説明する。
・ 博士号取得者が一定数いない企業の税金を上げる(ペナルティーを科す)
・ 企業と大学との連携をすすめ、企業が研究者を受け入れやすい環境をつくる。企業と大学との間を行き来できるキャリアパスをつくる。
・ テクニシャンの待遇をもっと向上させ、自分で研究が立案できなくても研究できる道を広くする
<その他>
・ テニュアでも研究者が循環しやすい環境をつくる
・ 年功序列の給与体系を見直し、ポスドクを重ねて年齢が上がっていても雇いやすくする
・ 企業が新卒にこだわらず積極的に中途採用を行い、転職に伴う不利益をなくすこと
・ 年収500万程度で任期はないが昇給もない、という、ポスドクと正規職員の間の職を創設する
・ 若手研究者がPIとして3〜5年研究に集中できるポストや研究費を増やす
・ 大学院重点化をやめる
・ 研究費や大学のインフラ整備より雇用の確保に予算をまわす
・ 評価側の公正さを担保し(縁故採用をなくすなど)、さらに競争力をはたらかせる
・ 研究施設の維持等にかかる負担をへらす
・ 非常勤の待遇見直し。同一労働/同一賃金、研究費をみとめる、ベテランであれば事実上の常勤化をはかるなど。
・ 博士課程進学者の就職率の公表。進学すべきかどうか判断するめやすになる。
・ 博士号の認定基準を厳しくし、博士号取得者の数を減らす
・ 研究者をめざす大学院生にもキャリア教育を行う
・ 競争至上主義の排除
・ もっとも困窮している世代を特定し、その世代に向けた対策を行う
・ 研究職と教育職を分ける
・ 一般の人の研究に対する理解を深める
4)その他の意見(3.と異なるものをピックアップ)
<今回のアンケートについて>
・ アンケート実施に心より感謝する。
・ アンケート結果をぜひ提言に反映してほしい。
・ アンケート結果の詳細を必ず公表してほしい。アンケートを行う際には回答者が結果を確認できるようにすることが主催者の義務である。
<学術会議の役割について>
・ 日本学術会議が本件に取り組むことには大きな意義があると思う。
・ 短期雇用ポストについて調査し、処遇改善などを政府に要求すべきである。
<シニア研究者の問題>
・ 国立大学の定年延長により若手の雇用ができなくなっている。
・ 専任ポストについている人で「若手問題」を知らない人が多すぎる。徹底した周知が急務である。
<その他>
・ ポスドク問題は、受け皿が少ないこともあるが、漠然と博士課程に進学する人が多いことも原因である。
・ 安定した雇用がなければ、結婚や育児ができない。少子化が問題になっている今、安定した雇用の提供には社会的な役割がある。
・ 非正規雇用と正規雇用の差がありすぎる。これは研究者だけの問題ではない。
・ 私立大学では、非常勤と常勤の格差が大きい。国立大学教員が近年給与削減を受けているのと同様、常勤教員も給与面で少し犠牲をはらうべきである。
すべてのアンケート結果は、googleの以下のサイトからご確認いただけます。
(10月6日追記:Google Docsにアクセスできない方はこちらのPDFファイルをご覧ください。)